世界人道サミット

『世界人道サミット(WHS)』の目的

 
世界の人道状況は大変厳しい局面を迎えています。相次ぐ紛争や自然災害、急速に進む人口増加や深刻な貧困、あるいは気候変動の影響などにより、私達が直面する人道危機はより複雑化・大規模化・長期化し、2015年にはいのちを繋ぐための支援を必要とする人々の数が世界中で1億人を超えました。紛争や暴力で避難生活を余儀なくされている人々の数は、第二次世界大戦後最悪の水準に達しています。また人道支援に携わるアクターの数も増え、新興国ドナーや民間企業など、その種類も多様化しています。加えて、ソーシャルメディアや携帯電話といった技術革新が進み、特に被災者自身が単なる支援の受け手に留まらず、積極的に情報発信をする機会ももたらされています。
 
 
このように国際人道支援を取り巻く環境がめまぐるしく変化する中、一人でも多くのいのちを救い、より効率的・効果的な人道支援を実現するためには、今何が求められているのか――それを議論するため、2016年5月23日と24日の2日間、史上初となる「世界人道サミット(WHS)」がトルコのイスタンブールで開催されます。この世界人道サミットは、既存の国際人道システムをいわば「21世紀型」に変えていくための方策を探ることを目的としています。国際社会として今どういった行動が必要かを議論し、具体的な提案を検討するとともに、変化を引き起こすために必要な政治的コミットメントの確保を目指して、各国政府や関係機関のリーダーが一堂に会します。そしてその事務局を担うのが、私たち国連人道問題調整事務所(OCHA)です。
 

『世界人道サミット』への道のりジュネーブで行われたグローバル準備会合の様子

このサミットに向けたプロセスでは、人道支援の原理原則に立ち返る意味で、「被災者や最も弱い立場におかれた人々を議論の中心に据える」ことを念頭に進められてきました。そのため、各国政府のみならず、実際に紛争や災害の影響を受けている人々や市民団体、民間企業など、さまざまな関係者が議論に参加しています。
 
また多様な意見を反映するため、これまで世界の9つの地域で準備会合を開催しました。東南アジアと北東アジアを対象とした準備会合も、日本及びインドネシア政府との共催で、2014年7月23-24日に東京で開かれています。各国政府関係者のほか、人道支援および開発援助に関わる国連機関や赤十字、あるいは非政府組織(NGO)、さらには民間企業、軍関係者、研究機関等、対象16カ国からの幅広い参加があり、その成果は他の地域準備会合やグローバル準備会合に活かされました。
 
これまで世界中で23,000人以上がこうした会合に参加し、インターネット上でも多くの意見が寄せられ、これらの議論は総合レポートとしてをまとめられました。そして2015年10月14日には最後のグローバル準備会合がスイスのジュネーブで開かれ、これまでの議論と最新の人道危機状況を踏まえ、世界人道サミット本番に向けた意見集約が行われました。また、共同議長サマリーが、このグローバル準備会合の成果として発表されました。一方、提言に対するフィードバックを一般からも広くオンラインで募集しています
 

『人道への課題』(Agenda for Humanity)

2016年2月9日、これまでに世界中から寄せられた意見やアイデアを集約して、国連事務総長が「人道理念は一つ、責任の共有を (One humanity, Shared Responsibility) 」と題する報告書を発表しました。この報告書には、グローバルな意思決定の中心にヒューマニティ(人道理念)と最も弱い立場に置かれた人々を据え、人道課題をより広範な政治的文脈の中に位置付けることを目指した事務総長のビジョンが集約されています。この報告書では、以下に掲げる「5つの核となる責任」を中心に議論が展開され、そうした責任を国際社会が今こそ共有しなければならないと訴えています。
 
  1. 紛争を予防・解決するためのグローバルなリーダーシップ: 世界のリーダーたちは、紛争を予防もしくは解決するため、早期からの行動や、迅速かつ整合性の取れた、断固たるリーダーシップを発揮しなければなりません。政治的関与を継続し、また必要に応じて複数の危機にも同時に対応し、さらに政治・経済両面での影響力も駆使する必要があります。平和で包摂的な社会を推進するための投資も求められます。また紛争の解決策は、広く一般市民とともに築いていくことが必要です。
  2. 人道規範を護持する: 紛争下で一般市民を保護し、人道支援のアクセスを確保するため、国際人道法・人権法・難民法の遵守を強化し、人道原則の護持にリーダーたちがあらためてコミットしなければなりません。違法行為があればシステマチックにこれを糾弾し、そうした行為に対する説明責任を改善すべく、グローバルな司法システムと国連安全保障理事会による関与の強化など、具体的な措置を実施することが求められます。また、こうした国際法に関する世界規模の啓蒙キャンペーンも検討すべきです。
  3. だれも置き去りにしない: 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」でも謳われている通り、紛争や災害に見舞われるなど、脆弱な立場に置かれ、あるいはリスクに晒されているすべての人々に必要な支援を届けなければなりません。それにはまず、2030年までに国内避難民の数を半減させるとともに、大規模な難民の動きに対しても責任を共有する必要があります。無国籍者も今後10年を目標になくさなければなりません。この他、女性や女の子のエンパワメント、ジェンダーに基づく暴力の撲滅、子どもの教育格差解消や、若年層の関与の促進なども不可欠です。
  4. 人々の暮らしを変える―届ける支援から、人道ニーズ解消に向けた取り組みへ: 現地の既存システムに取って代わるのではなく、その強化に努め、私たちの努力は、人々や地域社会のレジリエンスを高めることを中心に据えなければなりません。また危機が起こってから対応するのではなく、危機の発生をあらかじめ予測することに重点を置かなければなりません。そのためこれまでの細分化された取り組みを見直し、より幅広いパートナーと手を組んで、人道支援と開発援助の垣根や、組織・セクターの壁を越えて共に働く姿勢が求められます。
  5. 人道への投資: リスクをより良く管理し、危機の影響を出来るだけ減らすため、リスクの度合いに応じて現地の能力開発に投資しなければなりません。特にドナーは脆弱な状況に置かれている国々に対して援助予算で野心的な目標を設定し、平和で包摂的な社会造りへの投資を増やさなければなりません。長期化した危機に対応するために、国連や国際金融機関による新たな資金手当てプラットフォームの設立を検討する必要もあるでしょう。2018年には国連による人道アピールに対する資金手当ての割合を必要額の75%にまで高めるとともに、国連中央緊急対応基金(CERF)を現在の2倍となる10億ドル規模に増額するなどして、資金不足の緩和に努めることが必要です。
 
これら「5つの核となる責任」をまとめたものが、「人道への課題」と呼ばれる報告書の添付文書として含まれています。世界人道サミットでは、世界のリーダーが事務総長のこうしたビジョンへのサポートを表明し、「人道への課題」で求められている変化を実現するため、それぞれのコミットメントを宣言することとなります。
 

『世界人道サミット』と関連イベント

世界人道サミット期間中には、以下のような会議やイベントが開催されます。
 
  1. 本会議:国連メンバー国などの世界的指導者が一堂に会して、前述の「核となる5つの責任」について議論し、そこで求められている変化を実現するため、それぞれのコミットメントを宣言します。
  2. ハイレベルリーダー円卓会議:以下7つのテーマ別セッションが設けられる予定です。
    (1)紛争予防と解決のための政治リーダーシップ 
    (2)人道原則の遵守
    (3)強制移住
    (4)女性・女子のエンパワメント
    (5)自然災害と気候変動
    (6)届ける支援から人道ニーズ解消へ
    (7)人道資金手当て
  3. 特別会合:資金手当て、都市化と人道支援、イノベーションなどの個別テーマが現在検討されています。
  4. サイドイベント:本会議と平行して、隣接した別会場で実施します。説明会やセミナー、ワークショップやパネル会議など、世界中から参加を募り、審査を通過した100件ほどが実施されます。申込み等の詳細はこちら>>
  5. 展示フェア:5月22-24日、本会議と同じ会場で実施します。各国政府や人道支援に携わる団体、機関、企業などが参加対象で、自らの事業やプログラム、製品などを展示・発表することが出来ます。世界中から参加を募り、審査を通過した300団体ほどが出展可能となります。申込み等の詳細はこちら>>
  6. イノベーション・マーケットプレイス:5月22-24日に本会議と同じ会場で実施します。団体・企業紹介ではなく、効果的な人道支援に役立つ革新的な技術やサービス、プロセスを展示・紹介します。世界中から参加を募り、審査を通過した100件ほどが出展可能。申込み等の詳細はこちら>> 
     

 『世界人道サミット』とグローバルアジェンダ

世界人道サミットは、2015年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議の成果とも密接な関係があります。この会議で採択された「仙台防災枠組」に立脚して、災害リスク削減のための投資をさらに進めるとともに、いざという時にはしっかりと応急対応できるような備えを強化しておく必要があります。そして、紛争などの影響を受けている国々に焦点をあて、特にこうした国々による防災努力を支援していく一方、支援側としても短期的な人道支援のみならず、より長期にわたる開発援助も合わせて、垣根を越えた努力が求められています。
 
また、2015年9月には持続可能な開発目標(SDGs)が国連総会で採択されました。貧困や不平等に取り組む一方で、気候変動問題にも対応すると同時に平和で包摂的な社会を推進し、「誰も置き去りにしない(leave no one behind)」- 国連事務総長はそう述べています。最初にご紹介した1億人もの人々を本当に「置き去りにしない」ためには、自然災害や紛争の被災者を開発努力の中にしっかりと位置付ける必要があります。また、人道危機による被災者がこれ以上生まれないよう、あるいは危機の瀬戸際に追い込まれている人々がそこで何とか踏み留まれるよう、特に脆弱な立場におかれた人々の自立を支え、地域社会が持つ力を応援していくことも大切です。こうしたビジョンを実現するためも、世界人道サミットが極めて重要な役割を果すこととなります。

関連リンク

関連レポート

国連事務総長報告書"One humanity, Shared responsibility"(英語)
国連事務総長報告書「人道理念は一つ:責任の共有を」(日本語)
人道への課題“Agenda for Humanity” (英語)

WHS本会合関連情報

本会合・イベント要綱(英語)
公開イベント申請ガイド(英語)
よくある質問:FAQ(英語)
人道への課題:JICAレビュー

動画

世界人道サミットに向けた国連事務総長ビデオメッセージ(字幕付)
世界人道サミット:「究極の選択」あなたならどうする?(字幕付)
日本記者クラブでの合同記者会見動画(2016年4月)

背景情報

2016年トルコで開催が決定(日本語)
グローバル準備会合共同議長サマリー(英語)
準備会合総合レポート要約(日本語)
準備会合総合レポート(英語)
北・南東アジア地域準備会合結果(英語)
資金手当に関する国連ハイレベルパネル報告書(英語)

広報・メディア

NHK視点・論点「世界人道サミットと日本の役割」
国連事務総長「私の視点」世界連帯へ五つの提案(朝日新聞)
シリーズ「今日、そして明日のいのちを救うために―世界人道サミット5月開催」(UNICウェブサイト)
世界人道サミットと私たちの未来」(UNICウェブサイト)
OCHA日本人職員フィールドレポート(高尾裕香)
OCHA日本人職員フィールドレポート(小出圓)
渡部神戸事務所長インタビュー「岐路に立つ人道支援」(月刊誌『第三文明』2016年1月号から転載)
渡部神戸事務所長インタビュー「『人道』と『開発』の垣根越える支援を」(国際開発ジャーナル2016年5月号より)

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