世界人道サミット

世界人道サミット

 
 
2016年5月23日・24日の2日間、史上初となる世界人道サミットが、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の呼びかけにより、トルコのイスタンブールで開催されました。55カ国の国家元首もしくは政府のトップを含め、計173カ国から約9,000人が一堂に会し、政府や関係機関のリーダーの他、民間企業や市民社会の代表、国際機関やNGO関係者、そして難民や避難民など人道危機の影響を受けている人々も参加しました。日本からは政府代表として福田康夫元総理大臣が出席しました。
 

背景

世界の人道状況は大変厳しい局面を迎えています。相次ぐ紛争や自然災害、急速に進む人口増加や深刻な貧困、あるいは気候変動の影響などにより、私達が直面する人道危機は、より複雑化・大規模化・長期化しています。2015年にはいのちを繋ぐための支援を必要とする人々の数が世界中で1億人を超えました。また紛争や暴力で避難生活を余儀なくされている人々の数も、第二次世界大戦後最悪の水準に達しています。一方、人道支援に携わるアクターの数も増え、新興国ドナーや民間企業など、その種類も多様化しています。加えて、ソーシャルメディアや携帯電話等の技術革新が進み、特に被災者自身が単なる支援の受け手に留まらず、積極的に情報発信をする機会ももたらされています。このように国際人道支援を取り巻く環境がめまぐるしく変化する中、一人でも多くのいのちを救い、より効率的・効果的な人道支援を実現するためには、どのような方策が求められているのか。こうした課題を議論するため世界人道サミット(World Humanitarian Summit)が開催されました。
 

人道への課題 (Agenda for Humanity)

世界人道サミットに先立って国連事務総長が「人道への課題」を発表し、この中で示された優先行動事項を中心に議論が展開されました。特に以下の「5つの核となる責任」を国際社会が共有すべきだと訴えています。
 
  1. 紛争を予防・解決するためのグローバルなリーダーシップ
    世界のリーダーたちは、紛争を予防もしくは解決するため、早期からの行動や、迅速かつ整合性の取れた、断固たるリーダーシップを発揮しなければならない。政治的関与を継続し、また必要に応じて複数の危機にも同時に対応し、さらに政治・経済両面での影響力も駆使する必要がある。平和で包摂的な社会を推進するための投資も求められる。また紛争の解決策は、広く一般市民とともに築いていくことが必要。
  2. 人道規範を護持する
    紛争下で一般市民を保護し、人道支援のアクセスを確保するため、国際人道法・人権法・難民法の遵守を強化し、人道原則の護持にリーダーたちは改めてコミットしなければならない。違法行為があればシステマチックに糾弾し、そうした行為に対する説明責任を改善すべく、グローバルな司法システムと国連安全保障理事会による関与の強化など、具体的な措置を実施することが必要。また、こうした国際法に関する世界規模の啓蒙キャンペーンも検討すべき。
  3. だれも置き去りにしない
    紛争や災害に見舞われるなど、脆弱な立場に置かれ、あるいはリスクに晒されているすべての人々に必要な支援を届けなければならない。また、彼らを開発努力の中にしっかりと位置付け、彼らの自立を支え、地域社会が持つ力を応援していくことも重要。これは2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」でも謳われており、貧困や不平等に取り組む一方で気候変動問題にも対応し、平和で包摂的な社会を推進しようというもの。それには、2030年までに国内避難民の数を半減させるとともに、大規模な難民の動きに対しても責任を共有する必要があり、無国籍者も今後10年を目標になくさなければならない。その他、女性や女子のエンパワメント、ジェンダーに基づく暴力の撲滅、子どもの教育格差解消や、若年層の関与の促進なども不可欠。
  4. 届ける支援から人道ニーズ解消に向けた取り組みへ
    現地の既存システムに取って代わるのではなく、その強化に努めること。2015年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組」にも立脚し、人々や地域社会のレジリエンスを高めることを中心に取り組むべき。また危機が起こってから対応するのではなく、危機の発生をあらかじめ予測することにシフトすることも重要。これまでの細分化された取り組みを見直し、より幅広いパートナーと手を組んで、人道支援と開発援助の垣根や、組織・セクターの壁を越えて共に働く姿勢が必要。
  5. 人道への投資
    リスクをより良く管理し、危機の影響を出来るだけ減らすため、リスクの度合いに応じて現地の能力開発に投資しなければならない。特にドナーは脆弱な状況に置かれている国々に対して援助予算で野心的な目標を設定し、平和で包摂的な社会造りへの投資を増やす必要がある。長期化した危機に対応するための新たな資金手当てプラットフォームの設立も検討が必要。国連による人道アピールに対する資金手当ての割合を2018年までに必要額の75%に高めるなど、資金不足の緩和に努めなければならない。
 

構成

世界人道サミットでは、全体会合のほか、以下のセッションやサイドイベントが開催されました。
  1. ハイレベルリーダー円卓会議
    政府のトップや各機関のリーダーが、「紛争予防と解決のための政治リーダーシップ 」、「人道原則の遵守」、「だれも置き去りにしない」、「女性・女子のエンパワメント」、「自然災害と気候変動」、「届ける支援から人道ニーズ解消へ」、「人道資金手当て」という7つのテーマ別会議に参加し、具体的なコミットメント(必ず実行するという約束事)を表明した。
  2. 特別セッション
    「都市化と人道支援」、「イノベーション」、「人道危機下での教育」、「グローバルな健康危機」など15のテーマが議論された。
  3. サイドイベント
    セミナーやワークショップ、パネル展示など、132件が実施された。ショーン・ペン監督作品「ザ・ラスト・フェイス」のプレミア上映会やオーケストラの演奏会、写真展なども催された。
  4. 展示フェア
    各国政府や人道支援に携わる機関、企業など300団体ほどが、自らの支援プログラムや事業、製品などをそれぞれのブースで展示・発表した。
  5. イノベーション・マーケットプレイス
    民間企業や研究機関などの幅広い参加者により、効果的な人道支援に役立つ様々な技術やサービス等、100件ほどが紹介された。
     
 

成果

国連事務総長が議長総括を発表し、「人道への課題」で示された優先行動事項に対して広範な賛同が得られたことを確認しました。また様々な関係者から合計1,500件ものコミットメントが表明されました。具体的には、難民や国内避難民のため緊急支援と開発援助を連携させる新たなアプローチや、人道危機における教育を支援する基金の設立、さらには女性のエンパワメントや性的暴力の予防、障がい者の包摂や若者の役割を促進するための新たな取り組みも立ち上がりました。より効率的な資金活用を進めると同時に、OCHAが運営する国連中央緊急対応基金(CERF)を10億ドルに倍増させることや、脆弱国のための新たな融資スキームの設立も支持されました。また民間企業との連携やイノベーションを促進する取り組み、さらには人道危機に対する備えや災害に負けない力(レジリエンス)を高めていくためのパートナーシップも表明されました。他方、紛争の予防と早期解決のため、国連安全保障理事会の役割も含め、政治リーダーシップと根本原因に取り組むことの重要性があらためて強調されました。また国際人道法と人道原則の遵守を徹底させ、一般市民の犠牲者を減らし、違法行為に対する責任を問うための改善策も提起されました。次のステップとしては、9月に開かれる国連総会に向けて、世界人道サミットの成果と今後の方向性をまとめた国連事務総長報告書が提出されることとなります。この中で、今回示された様々なコミットメントを実現していくためのより具体的な道筋が提案されることとなっています。

関連リンク

関連レポート

国連事務総長報告書"One humanity, Shared responsibility"(英語)
国連事務総長報告書「人道理念は一つ:責任の共有を」(日本語)
人道への課題“Agenda for Humanity” (英語)

WHS本会合関連情報

本会合・イベント要綱(英語)
公開イベント申請ガイド(英語)
よくある質問:FAQ(英語)
人道への課題:JICAレビュー

動画

世界人道サミットに向けた国連事務総長ビデオメッセージ(字幕付)
世界人道サミット:「究極の選択」あなたならどうする?(字幕付)
日本記者クラブでの合同記者会見動画(2016年4月)

背景情報

2016年トルコで開催が決定(日本語)
グローバル準備会合共同議長サマリー(英語)
準備会合総合レポート要約(日本語)
準備会合総合レポート(英語)
北・南東アジア地域準備会合結果(英語)
資金手当に関する国連ハイレベルパネル報告書(英語)

広報・メディア

「21世紀の人道危機に挑む」(専門誌「外交」Vol.38から転載)
NHK視点・論点「世界人道サミットと日本の役割」
国連事務総長「私の視点」世界連帯へ五つの提案(朝日新聞)
シリーズ「今日、そして明日のいのちを救うために―世界人道サミット5月開催」(UNICウェブサイト)
世界人道サミットと私たちの未来」(UNICウェブサイト)
OCHA日本人職員フィールドレポート(高尾裕香)
OCHA日本人職員フィールドレポート(小出圓)
渡部神戸事務所長インタビュー「岐路に立つ人道支援」(月刊誌『第三文明』2016年1月号から転載)
渡部神戸事務所長インタビュー「『人道』と『開発』の垣根越える支援を」(国際開発ジャーナル2016年5月号より)

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