政策提言

2014年3月、国際人道支援や災害対応に携わる、政府・民間の実務者有志からなる「東日本大震災と国際人道支援研究会」が、東日本大震災における緊急対応と国際支援受け入れについて課題を整理し、今後のあり方をまとめた政策提言書を発表しました(OCHA神戸事務所長の渡部正樹もこの研究会のメンバーです)。
 
提言書は、東日本大震災という未曾有の大規模災害の教訓として、まず災害対応を担う自治体自身が被災したことにより、被災者ニーズの全体像を把握することが難しく、被災者のニーズと善意による国際支援とのマッチングで困難に直面したことをあげています。また、阪神淡路大震災以降に作られた国際支援受け入れに関する枠組みがあったものの、それを具体化するのに必要な、十分な理解やマニュアル、さらには訓練などが十分になされていなかったことから、受動的で、場当たり的なものにならざるを得なかったことも指摘しています。加えて被災者支援の現場においては、事前に国としての統一最低基準がなかったことから、ダンボールで仕切られただけでプライバシーがなかったり、悪臭を放つ仮設トイレなどといった避難所環境に関わる問題が生じたほか、女性や要援護者、子どもなど多様なニーズに十分対応できなかったケースなども問題点として挙げられました。同時にNGO/NPOなど、行政・指定公共機関以外のアクターとの連携・調整でも課題が残りました。さらには、緊急対応に携わる人材の一元的かつ一貫性のとれた育成が、国内対応関係者と国際協力関係者との間にある垣根の問題も含め、不十分である点も指摘されました。
 
以上を踏まえ、提言書には以下のような内容が含まれています。
 

第1部 南海トラフ巨大地震や首都直下地震等、将来の大規模な災害対応時の国際支援受け入れ

支援要請があってから受動手、またはアドホックに対応するのではなく、「より良く受け入れる」ための事前準備をすることを提言しています。具体的には、国際支援受け入れに関する日本政府としての基本方針を事前に明確化するとともに、国の役割を強化して一元的な意思決定体制を整備すること、また関連する標準手順書(SOP)の作成と周知につとめること、国際支援受け入れを前提とした法整備や関係国との協力協定の締結を進めること、必要な人材育成と登録・派遣制度の確立などに触れています。
 

第2部 国際基準を踏まえた国内最低統一基準づくり

国際的に有効な知見や基準を踏まえて現行の防災・被災者支援体制を見直すための専門検討会を発足させること、またこの検討会の活動を通じて、ニーズアセスメントや支援の質・内容などに関し、日本の地域特性と社会・文化的背景への配慮とも矛盾しない国内統一最低基準を策定すること、国際人道原則を守る義務を明確化すること、災害時には多様な支援ニーズがあることを認識し、これを最低基準に反映させること、あるいは被災者自身が支援に関する協議に参加し、支援を要求できるような行政措置をとること、そして防災計画にNGO/NPOの役割を明記し、調整メカニズムを構築することなどを取り上げています。
 

第3部 国内外で災害対応に従事する人材の育成

災害対応・被災者支援・国際支援受け入れなどに精通した実務者を育成するために求められる事柄を提言しています。特に人材育成が必要な優先分野と対象職責をあらかじめ特定し、政府内に人材育成機能を一元化すると同時に災害対応の手法も統一すること、また育成された人材を一元的に登録・活用するしくみを作ることなどに言及しています。
 

第4部 その他研究会で協議された内容(背景資料)

災害対策法(IDRL)、権利基盤アプローチ、ジェンダーや子ども、要援護者や、国内災害対応におけるNGO/NPOの役割など、提言を導き出すために協議されたた内容がまとめられています。
 
なお提言書では、かならずしも「国際支援の受け入れありき」の議論にならないよう、また国際的な基準やノウハウの押し付けとならないよう留意がされています。また先進諸国の中でも国際支援の受け入れ体制を率先して整備する意義は高いと思われることから、やや踏み込んだ内容も取り扱っています。
 
教訓と提言のより詳細は、こちらの提言書全文からご覧頂けます (人道研究ジャーナルVol.3別冊)。ぜひご一読下さい。